1999
Fri.Sep.3.1999/晴れ 大朝日岳(1870m)・以東岳(1771m)
新潟(17:00) R7 新発田市 R290 関川村 R113 飯豊町 白鷹町 R287 朝日町 大江町 柳川 大井沢トンネル (21:20)日暮沢小屋(泊)
Sat.Sep.4.1999/晴れ
日暮沢小屋(4:50) (5:20)ハナヌキ峰とりつき (6:20)古寺鉱泉分岐 (7:10)三沢清水 (7:40)古寺山 (8:20)熊越 (9:40)大朝日岳(10:30) (11:30)西朝日岳 (12:40)竜門小屋 (15:00)狐穴小屋(泊)
Sun.Sep.5.1999/晴れ
狐穴小屋(4:50) (6:00)以東岳(7:00) (8:00)狐穴小屋(8:30) (10:30)竜門小屋 (13:00)日暮沢小屋(13:20) (13:50)柳川温泉(14:20) 朝日町 R287 白鷹町 飯豊町 R113 関川村 胎内 新発田市 R290 (18:00)新津
(9/3)
前回の登山で、日帰りで飯豊連峰のダイクラ尾根を目指したが、リタイヤした。今回、じっくりと充実した山行を計画した。久しぶりに前夜泊を入れて2泊3日で、朝日連峰を大朝日岳から以東岳まで縦走することにした。出発が近くなるに従い天気予報は好転していった。土・日の天気は、最終的に保証された。最近、日帰りの山行が多かった。月曜日からの仕事のことを考えると、疲れが残らない日帰り山行は、よい面もある。しかし、コレステロールを気にしながらも、たまにはでかいステーキを食べたくなることがある。同様に、平日まで、疲れを引きずることになるだろうが、たっぷり2日の重装備の縦走も悪くない。
前夜、遅くまで営業しているスーパーに立ち寄り食料を調達する。装備のチェックリストをみながら、深夜まで荷造りする。荷物を軽くするため、また、飲酒即就寝をさけるためアルコールを持参しなかった。しかし、ザックの中身は、1泊2日分なのに、かなり重く肩がパンパンに腫れ上がった。他の登山者と違う装備として、無線機をあげるだけなのに、なにか工夫が不足しているようだ。
朝、職場まで荷物を車に積んで出社した。17時のチャイムと同時に、まだ混み合う前の新新バイパスを新発田市に向かって車を走らせた。途中、R7を離れて菅谷からR290に入る。関川村でR113に入り、コンビニで夕食、翌日の朝食、昼食まで仕入れる。飯豊町の手ノ子で左折し、白鷹町でR287を北上する。朝日町の朝日ワイナリ付近で左折し、大江町にはいる。ここより日暮沢への林道入り口の見附まで狭い道や山道が続く。夜間の通行は、ほとんどない。この道を知る前は、R287大江町、R112西川町、月山湖、見附を経由していた。狭い山道で対向車に出くわすと、夜間のバックは、危険きわまりないものになる。
夜9時すぎに、日暮沢小屋に到着する。新しい3階建ての小屋なので快適である。今回、貸し切りで泊まる。気温は高く、朝方まで寝袋に入らなかった。
(9/4)
外が明るくなると同時にハナヌキ峰経由で大朝日岳を目指して出発する。夜露で葉に水滴がついていて、スパッツと靴が濡れる。林道を30分ほど歩くと、尾根へのとりつきにでる。しばらく急な登りが続く。霧がでていたが、しばらくすると下界に雲海が広がり、高い山々が海に浮かぶ島に見える。北に月山がひときわ高く見える。上を見ると西朝日岳付近の稜線が見え、まだまだ位置は上方にある。尾根上に上がると東からまぶしい朝の太陽が照りつける。古寺鉱泉との分岐点を過ぎ、しばらく登ると三沢清水に到着する。豊富な冷たい水がホースからほとばしり出ている。十分飲んで、大朝日岳の手前にある銀玉水までの水1リットルを補給する。
古寺山の手前から大朝日岳まで見事なリンドウが登山道脇に咲いている。この道は、リンドウ街道である。古寺山をすぎると先行者の2人連れが見える。小朝日岳の下の熊越で挨拶すると日暮沢から大朝日岳を日帰りするとのことであった。大朝日岳のY字型の谷が見えてくると、上下する多くの登山者の姿が見える。道を譲る際、話をすると、鳥原小屋から登る人、すでに登って降りる人、竜門小屋から下山する人がいた。驚いたことに、竜門小屋に金曜夜、20人が宿泊したとのことである。大朝日小屋の改築を知らずに、やむなく竜門小屋まで足を延ばした人が多かったようだ。
紅葉前なので、登山者は少ないだろうと予想していたが、今夜の宿泊の混雑が心配になる。私は、体力があれば狐穴小屋に泊まるが、疲労が激しければ竜門小屋泊まりを考えていた。しかし、この話を聞いてどうしても狐穴小屋まで、行く決断をしなければならなかった。せっかく山上の休暇を楽しむには、多少苦労があっても、ゆっくり静かにゆとりを持って小屋で過ごしたい。その点、朝日連峰において、狐穴小屋は、いずれの登山口から登っても数時間かかるので、比較的すいている小屋なのである。結果として、登り初めて狐穴小屋にたどり着くまで10時間の行程となり8時間以上歩き続けたことになる。
銀玉水でおいしい水を飲み、竜門小屋までの水を補給し、大朝日岳をめざす。大朝日小屋は、改築中で使用できないとインターネット上で紹介されていたとおり、コンクリートの基礎上に本日、鉄骨を建てる作業が進められていた。現在の小屋のすぐ隣に建てられていた。重機が使われ、パワーショベル、クレーンが動いていた。これらの重機は、細かく分解され、ヘリで上げられ、再度、ここで組み立てられたものと思われる。コンクリートを作るために、ミキサーがあった。水は、金玉水からエンジンポンプでホースを使い、小屋まで2段階で貯水槽にため上げられていた。作業員は10人ほどで、小屋は作業員の宿泊施設になっているようだ。10月10日が完成予定日である。
大朝日岳の山頂に立つと、登りで火照ったからだにちょうどよい秋風が吹いていた。南に飯豊連峰が見えるはずだが、残念ながら確認できなかった。その替わり祝瓶山(1417m)の剣の形に似た勇姿が、きわだっていた。無線で2局と情報交換した。これから向かう以東岳への縦走路をながめ山頂を後にした。
狐穴小屋までの行程で西朝日岳、南寒江山、北寒江山の登りがきつい。見上げるような登りである。午後になってから雲海が消えたかわりに上空を雲が覆う。時々、きつい日射しを遮ってくれるので、助かる。南寒江山、寒江山、北寒江山の北面に雲が湧く。稜線上を下界を眺めながらの天井歩きは、実にいい気分である。竜門山から狐穴小屋まで、トリカブトやマツムシソウがたくさん目についた。小さな白や黄の花があるが、名前がわからない。
狐穴小屋は、築後2年目で快適である。水場は、入り口の前にある。登山客の大半は、県外客のようだ。単独行とパーティが半々で、17人の登山者が宿泊した。管理人のおじさんが管理協力費1,500円を集金にきた。木の幹を薄く切断した面に焼き印を押したペンダントのような記念品をもらった。絵柄は、以東岳をバックにした狐穴小屋である。朝日連峰、狐穴小屋と記されている。どうせ作るなら、コースターにすれば、使用価値が高まるのであるが。管理人は年輩の方で、竜門山経由で下山するらしい。いつも竜門小屋と狐穴小屋を掛け持ちで清掃し、集金し下山するようだ。上り下りする途中で、何度もあっているが、えらく足の速い方である。登山者の多くは、大宴会を開くこともなく、早い夕食を済ませると、朝早い出発のためか暗くなるとすぐに寝袋に入り込んで静かになった。
深夜、地面をたたく滴の音に目が覚めた。しかし、窓から見える夜空に星が輝いている。窓を開けて外をのぞくと、夜露が屋根から地面に落ちて雨音のように聞こえたのがわかった。小屋の外にでてみると、間近にたくさんの星が輝いている。上空を横切るように天の川が走っている。天の川をみるのは、何年ぶりだろうか。流れ星が1個だけ天空に直線を描いて消えた。夜明けまで、まだ、数時間待たねばならなかった。
(9/5)
4時に、誰かがアラームをセットしていた。ひとりが起きると連鎖反応で、皆、起き出して朝食と出発の準備を始める。私は、昨日の夕食の残りを食べて、まだ薄暗い5時前に以東岳に向けて出発した。サブザックの荷物は、水、軽食、無線機、カメラ、ビノキュラなどである。少し歩いただけで、防水のきかない靴は、葉についた夜露で、中まで濡れてしまった。これでもゴアテックスかとあきれてしまう。
昨日、かなり歩いたので、夜中に足がけいれんしたり、翌日の歩行に支障がでないように、足の筋肉をもみほぐしてから寝た。初めての試みであったが、これは効果があるようだ。夜中に足が痛くて目を覚ますこともなく、また、朝、足が軽くなっていた。今度は、鎮痛、消炎の効果のあるクリームでも塗ってマッサージをしたら、帰宅後、全く足に疲労が残らないのではないか。
暗いうちは、シルエットだった以東岳が、時間がたつとともにその形を明らかにしていく。雲の下から、太陽が、顔をのぞかせると、一気にあたりが白黒からカラーに変わる。日の当たる山頂の斜面から輝き始める。夜露に濡れた草木の葉の滴が、キラキラと輝く。少しずつ気温が上がってい行く。
以東岳への登りの途中で、5人パーティーの学生にあった。以東小屋の宿泊者は、7人だったそうである。以東岳に到着すると、昨日、確認できなかった飯豊連峰が、見える。特に、石転び沢の雪渓が垂直に残っているのがわかる。月山も近くに見える。大朝日岳がなだらかそうに見える稜線の最南端に左右対称なピラミッド型の姿を見せている。朝日鉱泉から登り大朝日岳、以東岳と完全縦走した船橋からきた登山者が語っていたが、なだらかそうに見える稜線は、実は、結構きついアップダウンがあると言っていた。全く、その言葉どおりである。早朝であったが、無線局2局とつながった。大鳥池の水位が落ちて周辺部の土が露出していた。晴天つづきのせいだろう。
大朝日岳方面の写真をとりながら、狐穴小屋に戻る。この時刻、見える範囲で縦走者は2人きりである。途中で話をすると、東京からやってきて、4泊5日で大鳥池から入り大朝日岳まで縦走し、古寺鉱泉に下山するとのことで、実にゆっくりと単独行をたのしんでいる様子であった。狐穴小屋や竜門小屋は、人気がなく閑散としていた。平日に泊まれたら実に静かな時間をもてるだろう。
竜門山から日暮沢まで下山する。泊まり客と思われる登山者が6人いた。何かうらやましい気がする。下界は、とてもあつい。柳川温泉で汗を流して、帰路に就く。この秋の紅葉は、いつもよりきれいだろうという話を聞く。夏の暑さのおかげで、かなり期待がもてるとのこと、9月中に再訪したいものである。